エレミアの地で(6/8:エレミア)
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エレミアは職人の国である。所狭しと様々な品物が軒を連ね、砂漠国家でもあるエレミアの熱い風がなお一層、強く人々を撫で付ける。
「兄貴なら、この剣の価値も解るのかも知れないけどな……」
その野外で吊るされている武器防具については、ちょっとした権威でもあるラディ少年の「兄貴」は、しかし今は彼の近くにいない。少年が聞く所によると、別の異国で傭兵として働いているようだ。
「おい、ラディ坊主!!」
「な、なんだいオッサン!?」
「ほらよ、受けとれ!!」村から出るときにラディがここまで護衛した商人、その彼がそう怒鳴りながら、小さな巾着を彼ラディにと投げ渡す。
「……いいのかい、これ?」
その巾着の中には幾枚かの銀貨、ここまでの道中で狼に襲われてしまった彼を、偶然にも助けたラディに対する礼だとでもいうのかもしれない。
「エレミアのギルドにどやかされずにすんだからよ……」
「へえ……」
「エレミアのギルドは厳しいんだ」
そう言いながら、銀細工を扱っている商人の男はその太った身体を傾けながら、ラディの肩をポンとその手で叩いてみせる。「ノルマノルマ、品質管理コストを下げろってね」
「そうなのかい……」
「あーあ、俺も」商人はそう言いつつ、わざとらしい生あくびをしてみせ、天に高く登った太陽をじっと睨み付けた。
「冒険者になれればなあ……」
「冒険者だって辛いとおもうぜ?」
「言うのか、素人が?」
「フン……」そう、微かな嫌みを言った後にその身体をラディから遠ざけていく商人、彼の姿へラディは一つ頭を下げた後。
「ふぅん、サボテンジュースね……」
近くの屋台、そこから立ち上る煙と香しい果実の薫りにその鼻をひくつかせる。
「せっかくのあぶく銭だ、ウン」
ジュ……!!
旨そうな肉の焼ける匂い、それに自らの腹が耐えられなくなったラディは、彼の赤い短髪をかきあげながら。
「オッサン、鳥の焙り肉一つとサボテンジュース!!」
「あいよ!!」砂が撒かれた地面、その上でブーツを踏み鳴らす。
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