ニーヌの日(20/6/9 オランの港にて)

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    早起き三文
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     ミ、ミャア……!!

     さすが異国の大地オラン、見慣れない波止場の青い風景、そして。

    「ふぅーん、これ変わった化粧水ねえ……」

     そのオランの港に所狭しと積まれている様々な化粧品、その一つにあたしは自身の手を伸ばし、そして船の船員達に色目を使い。

    「ねぇ、これあたしにくれない?」
    「う、うーん……」
    「お、ね、が、い、ニーヌの頼み……」
    「お、おうともよ!!」

    「格安」で、その化粧品達を手にいれる。

    「ふん、ふーん……」

     こういうときにあたしは自分が美人であることが特だと思える。まあたとえ、その化粧によるものだとしてもだ。

     ミャア……

     うみねこが数多く鳴いている、その鳴き声に釣られるかのように空を見上げた私の視線の先には、また一つ異国からの船が。

    「あれは、呪われた島からの……」

     呪われた島、私ことニーヌの生まれ故郷であり、戦乱が覆う土地。もっとも。

    「もうすでに解放された島、ねぇ……」

     そう、呆れたように一人口ごもりながら、あたしは自らの唇にリップを軽く塗りつける。その様子を近くの船乗り達が興味深そうに見つめるのを得意である「芝居」がかった仕草で無視し、私はその化粧の調子を手鏡を使って確かめてみる。

    「ふふ、美人美人……」

     呪われた島で傭兵王と呼ばれた男、彼にある大地母神に仕える少女に似ていると言われた事がある。その誉め言葉を胸に秘めて、あたしことニーヌは今日も己の可憐な仕草、それを辺りへと振りまく。

    「ねえ、そこのお兄さん?」
    「は、はひ何です!?」
    「奇跡の店って、何処にあるの?」
    「奇跡の店、それは……」
    「貴方冒険者でしょ、見ただけで解るわよ?」

     その私の類いまれなる色香に惑わされた哀れな子羊がまた一匹、今日の僕となりそうだ。その事に私はほくそ笑みながら。

    「マーファよ、美人に産んでくれて感謝します……」

     目前へと拡がった化粧品を片づけつつに、あたしはよく晴れた青空の元で神官着から突き出た胸を張り。

     ドゥ!!

    「あう!?」
    「あ、オバサンごめんだニュ」
    「な、なんやて!?」

     盛大に、小人に突き飛ばされその自慢の鼻を波止場の石畳にとぶつけた。

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